腰痛を繰り返す背景には、身体の「動き方」も関係している?
腰だけを見ない「モビリティ」と「スタビリティ」から考える身体の使い方
「腰が痛いなら、腰をもっと動かしたほうがいいのだろうか?」
「腰が不安定だから、体幹を鍛えたほうがいいのだろうか?」
腰痛について考えるとき、私たちはつい「腰」そのものに注目しがちです。
しかし、「歩く、しゃがむ、立ち上がる、物を持ち上げる」といった日常の動作は、腰だけで行われているわけではありません。
股関節や胸椎、骨盤、足首など、さまざまな部位が協調しながら動いています。
そこで、身体の使い方を考える一つの視点となるのが、
「モビリティ」と「スタビリティ」
という考え方です。

※上の図は、身体の動きを考えるための一例です。
各部位が「動く」「安定する」のどちらか一方だけの役割を持つという意味ではありません。
モビリティとは?
「身体の各部位が、必要な範囲で無理なく動けること」
を指します。
例えば、しゃがむ動作では、腰だけでなく股関節や足首なども一緒に動きます。
研究では、腰痛のある人とない人を比較すると、腰椎の動く範囲や、股関節の可動域・動き方などに違いがみられることがあると報告されています。
ただし、ここで大切なのは、
「身体が硬いから腰痛になる」
と単純に考えないことです。
これらの研究は、腰痛のある人とない人の違いを調べたものであり、動きの違いそのものが腰痛の原因であることを証明したものではありません。
また、痛みがあることで身体の動き方が変化している可能性も考えられます。
つまり、
「動きに違いがあること」と「それが痛みの原因であること」は、必ずしも同じではありません。
スタビリティとは?
スタビリティとは、簡単にいうと、
「身体を支えながら、安定して動くための働き」
のことです。
例えば、物を持ち上げるとき、身体はただ動いているだけではありません。
姿勢が大きく崩れないように身体を支えながら、股関節や膝、上半身などを動かしています。
つまり、私たちがスムーズに動くためには、
「動くこと(モビリティ)」と「支えること(スタビリティ)」
の両方が必要になります。
腰痛に対しては、このような身体のコントロールを意識した運動についても研究されており、痛みの軽減や日常動作のしやすさにつながる可能性が報告されています。
ただし、「体幹を鍛えれば腰痛がよくなる」という単純なものではありません。
研究では、このような運動が他の運動よりも必ず優れているとは示されていません。
そのため、体幹の強さだけに注目するのではなく、身体全体をどのように動かしているかにも目を向けることが大切です。
大切なのは「どのように身体を使っているか」
モビリティとスタビリティだけで、腰痛の原因を説明できるわけではありません。
しかし、
「身体がどのように動き、どのように支えているのか」
を考える一つの視点になります。
身体には、
必要なところが動くこと
そして、
必要なところを支えながら動くこと
の両方が求められます。
腰痛を考えるうえでは、症状が出ている腰だけを見るのではなく、
- 股関節や胸椎などがどのように動いているか
- 身体を支えながら動くことができているか
- 日常生活や仕事ではどのように身体を使っているか
といったことにも目を向けてみることが大切です。
腰痛館では、症状が出ている場所だけでなく、身体全体の動きや日常生活での身体の使い方にも目を向けながら、より動きやすい身体を目指していきます。
参考文献
- Errabity A, Calmels P, Han WS, et al. The effect of low back pain on spine kinematics: A systematic review and meta-analysis. Clinical Biomechanics. 2023;108:106070.
- Pizol GZ, Miyamoto GC, Cabral CMN. Hip biomechanics in patients with low back pain, what do we know? A systematic review. BMC Musculoskeletal Disorders. 2024;25:415.
- Niederer D, Engel T, Vogt L, et al. Motor Control Stabilisation Exercise for Patients with Non-Specific Low Back Pain: A Prospective Meta-Analysis with Multilevel Meta-Regressions on Intervention Effects. Journal of Clinical Medicine. 2020;9(9):3058.
- Saragiotto BT, Maher CG, Yamato TP, et al. Motor control exercise for chronic non-specific low-back pain. Cochrane Database of Systematic Reviews. 2016;2016(1):CD012004.

