第2弾 ~あなたの日常生活を見直してみましょう~
前回の第1弾「最新研究が示す 異常がない腰痛の背景に隠れているものは?」では、
腰痛の多くは単純に骨や椎間板だけの問題ではなく、さまざまな要因が関係していることをお伝えしました。
実際、腰痛の約85%は明確な原因を特定できない「非特異的腰痛」とされています。
では、その背景には何があるのでしょうか?
今回はその中でも、
私たちが毎日何気なく行っている日常生活や仕事中の身体の使い方、そして運動習慣に焦点を当ててみたいと思います。
もしかすると、繰り返す腰痛のヒントがそこに隠れているかもしれません。

~実は「日常動作のクセ」が関係しているかもしれません~
このようなことはありませんか?
□ 午後になると腰が重だるくなる
□ 長時間座った後に立ち上がると痛い
□ 朝は平気なのに夕方になるとつらい
□ 病院で検査をしたが「異常なし」と言われた
□ その時は良くなっても、また腰痛を繰り返してしまう
一つでも当てはまる方は、今回のコラムがお役に立つかもしれません。
腰痛の多くは「原因が一つではない」
腰痛館には、
「レントゲンでは異常なしと言われた」
「ヘルニアはあるけど、痛みの原因とは言えないらしい」
「治ったと思ったのに、また腰痛になった」
というお話をよく伺います。
実は腰痛の約85%は、画像検査を行っても明確な原因を特定できない『非特異的腰痛』とされています(Hartvigsenら, 2018)。
近年の研究では、腰痛は単純に骨や椎間板だけの問題ではなく、
・身体の使い方
・身体活動量
・筋肉や関節への負荷の蓄積
・ストレス
・睡眠状態
など、複数の要因が関係していることが分かっています。
つまり腰痛は、
「一つの原因で起こる病気」
ではなく、
「さまざまな要因が重なって現れる症状」
と考えられています。
日常動作のクセが腰痛につながる理由
① 長時間同じ姿勢を続ける
デスクワークや車の運転などで同じ姿勢を続けると、腰周囲の筋肉や関節、神経組織に負担が蓄積しやすくなります。
近年の研究では、
「姿勢の良し悪し」よりも、「同じ姿勢を長時間続けること」が腰痛リスクに関係すると考えられています。
つまり、
悪い姿勢だから腰痛になるのではなく、動かない時間が長いことが問題なのです。
そのため、30~60分に一度は立ち上がったり、身体を動かしたりすることが大切です。
② 偏った身体の使い方
・いつも同じ足に体重をかける
・同じ方向ばかり向いて作業する
・決まった側で荷物を持つ
こうした身体の使い方が、直ちに腰痛を引き起こすわけではありません。
しかし、同じ動作や姿勢が毎日繰り返されることで、一部の筋肉や関節に負荷が集中しやすくなる可能性があります。
身体にとって大切なのは、「正しい動き」ではなく、
「さまざまな動きを使い分けられること」です。
③ 中腰姿勢の繰り返し
介護、育児、農作業、清掃業などでは、中腰姿勢を繰り返す場面が少なくありません。
Nachemsonの研究では、前かがみ姿勢によって腰椎椎間板への圧力が増加することが報告されています。
しかし近年では、「椎間板への圧力が高い=痛み」ではないことも分かっています。
問題となるのは、同じ姿勢や動作の繰り返しによる疲労の蓄積です。
中腰作業が続く場合は、こまめに身体を起こしたり、作業姿勢を変えたりすることが重要です。
④ 運動不足
WHO(世界保健機関)は、身体活動不足を健康上の重要なリスク因子として位置付けています。
腰痛についても、適度な身体活動や運動習慣は、腰痛の予防や再発予防に役立つことが報告されています。
運動には、
・身体機能の維持
・ストレス軽減
・睡眠の質の向上
などの効果が期待できます。特別な運動である必要はありません。
まずは散歩や軽い体操など、続けやすい運動から始めることが大切です。
実は「画像異常=腰痛」ではありません
MRI検査では、
・椎間板変性
・椎間板膨隆
・椎間関節の変化(変形性変化)
・脊柱管狭窄
などの加齢に伴う変化が見つかることがあります。
しかし研究では、腰痛のない人にもこのような画像所見が認められることが報告されています。
つまり、画像で異常が見つかったからといって、それが必ずしも痛みの原因とは限りません。
画像所見だけで腰痛を説明できないことも多いのです。
近年の研究から分かってきた腰痛との向き合い方
近年の腰痛に関する研究や診療ガイドラインでは、
✓ 過度な安静を避ける
✓ できる範囲で日常生活を続ける
✓ 適度な運動を行う
✓ 心理的・社会的要因にも配慮する
ことの重要性が示されています。
腰痛は身体だけの問題ではなく、
心や生活環境も含めて考える
「生物・心理・社会モデル」
で理解することが大切だと考えられています。
当院で大切にしていること
当院では、痛みのある場所だけを見るのではなく、
「・立ち方・座り方・歩き方・日常動作・運動習慣・睡眠状態」なども含めて評価しています。
そして、
「なぜその場所に負担が集中したのか」を一緒に考えながら、再発しにくい身体づくりを目指します。
ただし、腰が辛い場合は一度、医療機関で検査を受けるようにしましょう。
腰痛館からひと言
腰痛の原因は一つではありません。
年齢による変化や画像検査で見つかる所見も大切な情報の一つです。
しかし実際には、それだけでなく、日々の身体の使い方や活動量、睡眠、ストレスなど、さまざまな要因が関わっていることがあります。
だからこそ大切なのは、
「痛い場所だけを見ること」ではなく、
「なぜその場所に負担が集中したのか」を考えることです。
腰痛館では症状だけでなく、その背景にある生活習慣や身体の使い方にも目を向けながら、再発しにくい身体づくりをサポートしています。
「どこへ行っても腰痛を繰り返してしまう」
「検査では異常がないと言われたけれど症状が続いている」
そのようなお悩みをお持ちの方は、ぜひ一度ご相談ください。
【参考文献】
Hartvigsen J, Hancock MJ, Kongsted A, et al.
What low back pain is and why we need to pay attention.
Lancet. 2018;391:2356-2367.
Brinjikji W, Luetmer PH, Comstock B, et al.
Systematic Literature Review of Imaging Features of Spinal Degeneration in Asymptomatic Populations.
AJNR Am J Neuroradiol. 2015;36(4):811-816.
Nachemson A.
The Load on Lumbar Disks in Different Positions of the Body.
Clinical Orthopaedics and Related Research. 1966.
World Health Organization.
Guidelines on Physical Activity and Sedentary Behaviour. 2020.
日本整形外科学会・日本腰痛学会
腰痛診療ガイドライン2019改訂第2版

